頭部外傷

“見えにくい障害”と向き合い、
もう一度、あなたらしい生活のリズムを。
転倒や交通事故など、頭への強い衝撃によって脳が傷ついてしまう「頭部外傷」。手足の麻痺だけでなく、記憶や注意、感情のコントロールといった“目に見えにくい障害”が現れやすいのが特徴です。
ご本人も周囲も、その変化に戸惑い、不安を感じることが少なくありません。
しかし、適切なリハビリテーションと環境の調整によって、再び穏やかな日常を取り戻すことは十分に可能です。私たちは、患者さん一人ひとりの症状と丁寧に向き合い、その人らしい生活を再構築するためのお手伝いをします。
「頭部外傷」とは?
頭部外傷とは、頭に強い衝撃が加わることで脳が損傷する状態です。
転倒・交通事故などで脳が傷つくと、運動麻痺だけでなく、注意・記憶・感情コントロールなど“見えにくい障害”が出やすいのが特徴です。症状は時間経過で変化し、疲労や環境ストレスで悪化することもあります。
病状・起きやすい障害
手足の麻痺といった「目に見える障害」だけでなく、以下のような「目に見えにくい障害」が生活のしづらさにつながることがあります。
- 身体の障害
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片麻痺(体の片側の動かしにくさ)、ふらつき(失調)、筋肉のつっぱり
- 高次脳機能障害
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- 注意障害: 気が散りやすい、ぼーっとしてしまう
- 記憶障害: 新しいことを覚えられない、約束を忘れる
- 遂行機能障害: 物事の段取りを立てて、計画的に実行するのが苦手になる
- コミュニケーションの障害
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言葉がうまく出てこない(失語)、ろれつが回らない(構音障害)
- 心と感情の変化
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疲れやすい(易疲労)、怒りっぽくなる(易怒性)、不安や抑うつ
- その他
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頭痛、めまい、光や音に過敏になる
当院の専門的リハビリテーション
あなたの「できるようになりたい」に応えるため、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)が、生活の再構築を支えます。
理学療法:安全に動ける身体をつくる
- 座る・立つ・歩くの再獲得(バランス、持久力、転倒予防)
- 痙縮や関節拘縮の予防、痛み・頭痛に配慮した運動量調整
- 体力(有酸素・筋力)を“安全に積み上げる”計画(疲労管理含む)

作業療法:日常生活を組み立て直す
- ADL/IADL(家事・買い物・金銭管理など)を、注意・記憶の特性に合わせて再設計
- メモ、スケジュール、チェックリスト等の代償手段の獲得
- 社会復帰(復職・復学)に向けた環境調整、家族教育

言語聴覚:「話す・聞く・食べる」を支える
- 失語・発話・認知コミュニケーション(会話の理解、話のまとまり、注意)への訓練
- 嚥下評価と食事の安全管理(誤嚥性肺炎の予防)
- 家族へ「伝わりやすい話し方」「疲れやすさへの配慮」などの指導

よくある質問
注意・記憶・段取り(遂行機能)・感情コントロールなどの障害は外見から分かりにくく、退院後に困りごととして目立つことがあります。
脳の損傷の影響で起こることがあり、本人の努力だけで解決しにくい場合があります。環境調整(刺激を減らす、休憩を入れる)と関わり方の工夫が大切です。
回復には時間がかかることがあり、退院後も外来・訪問・地域資源を組み合わせて支援します。
「できないことを叱る」より、できる形に作り替える(代償手段)ことが効果的です(例:メモ、手順書、タイマー)。
国内では頭部外傷の治療・管理に関するガイドラインが整備され、改訂も行われています(急性期中心ですが、支援体制の重要性が強調されています)。
ご家族の方へ
ご家族の関わり方が、ご本人の安心と回復に大きく影響します。焦らず、根気強く、私たちと一緒にサポートしていきましょう。
- 伝え方の工夫: 指示は「短く、具体的に」。一度にたくさんのことを伝えず、一つずつお願いするようにしましょう。
- 仕組みで防ぐ工夫: お薬の飲み忘れや火の元の確認など、間違いが起きやすいことは、チェックリストやタイマーを使うなど、「仕組み」でカバーする方法を一緒に考えます。
- 「疲れ」のサインに気づく: ご本人は疲れを自覚しにくいことがあります。活動の合間に休憩を入れるなど、1日のスケジュールを一緒に管理しましょう。
- ご家族自身のケアも大切に: ご家族の負担も大きくなりがちです。一人で抱え込まず、相談窓口や家族会など、外部のサポートも積極的に活用してください。
退院後の生活で大切なこと
穏やかな生活リズムを保つことが、症状の安定につながります。
当院では、ご自宅に戻られた後も、訪問リハビリや通所リハビリといったサービスで、あなたの「自分らしい暮らし」を継続的にサポートします。
退院後の注意点
- 危険なサインに注意: 頭痛がひどくなる、吐き気が続く、意識がもうろうとするなどの症状は、すぐに受診が必要です。
- 生活環境の工夫: 予定はカレンダーで見える化する、静かで落ち着ける時間を作る、毎日決まった時間に寝起きするなど、生活にリズムを作りましょう。
- 社会復帰は焦らず段階的に: 復職や復学は、短時間から始めるなど、無理のない計画を立てることが成功の鍵です。医療スタッフと一緒に、あなたに合ったプランを考えましょう。