脊髄損傷

できなくなったことへの不安を、
「これから、できること」への希望へ。
事故などによる思いがけない怪我で、これまで当たり前だった身体の感覚や動きが大きく変わってしまう「脊髄損傷」。ご本人もご家族も、大きな不安の中にいらっしゃるかもしれません。
しかし、ここからが、ご自身の身体と向き合い、新たな生活を組み立てていくリハビリテーションの始まりです。
私たちの役割は、残された機能を最大限に引き出し、再びあなたらしい人生を歩むためのお手伝いをすることです。専門家チームが一丸となって、あなたの「次の一歩」を支えます。
「脊髄損傷」とは?
脊髄は「脳からの命令を手足・体へ伝える神経の束」です。外傷などで脊髄が傷つくと、傷ついた高さ(頸髄・胸髄・腰髄)や重症度により、運動・感覚・自律神経(血圧、排尿排便など)の働きに障害が起こります。
病状・起きやすい障害
損傷の場所や程度によって、以下のような様々な症状が起こることがあります。
リハビリテーションでは、これらの症状と向き合い、生活への影響を最小限にするための方法を一緒に考えていきます。
- 麻痺
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手足が動かしにくい/力が入りにくい(四肢麻痺・対麻痺など)
- 感覚障害
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しびれ、触った感じがわかりにくい、痛みの感じ方の変化
- 痙縮(けいしゅく)
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筋肉がつっぱる、勝手に動くように感じる
- 排尿・排便障害
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尿が出にくい/漏れる、便秘など
- 呼吸や嚥下(飲み込み)の問題
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特に頸髄損傷や人工呼吸器・気管切開がある場合
- 褥瘡(じょくそう)
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感覚低下と同一姿勢が重なると皮膚トラブルが起こりやすい
当院の専門的リハビリテーション
あなたの「できるようになりたい」に応えるため、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)が、あなたの目標達成をサポートします。
理学療法:立つ・歩くなど、動作能力の再獲得
- 関節が固まらないための可動域練習、痙縮への対応
- 座位バランス、起き上がり・移乗(ベッド⇄車いす)練習
- 立位・歩行練習(装具、免荷、電気刺激、ロボット等を適応により検討)
- 呼吸ケア(痰の出し方、呼吸筋トレーニング)※必要時

作業療法:日常生活やその人らしい活動の再獲得
- 食事、更衣、整容、トイレなど 日常生活動作(ADL) の獲得
- 手の機能訓練(頸髄損傷など)、自助具の選定
- 退院後の生活を想定した動作練習(家事、復職、運転、趣味)
- 住宅環境調整(段差、手すり、動線)と福祉用具(車いす・ベッド等)の提案

言語聴覚:食べる・話すことのサポート
- 嚥下(飲み込み)評価と食形態・姿勢・訓練の調整(頸髄損傷、気管切開、誤嚥リスクがある場合)
- コミュニケーション支援(呼吸器管理や発声が難しい場合の代替手段)

よくある質問
損傷の高さ(頸髄・胸髄など)と重症度(完全麻痺か不全麻痺か)で回復の見通しは変わります。回復期は「できる動作を増やす」だけでなく、合併症を防ぎながら生活を組み立て直す時期です。
神経の損傷による痛みやしびれ、痙縮は残ることもあります。姿勢・動き方・ストレッチ・装具・薬などを組み合わせて“生活のしやすさ”を上げていきます。
脊髄損傷では神経因性膀胱などの排尿障害が起きやすく、管理がとても重要です。排尿方法(導尿など)、感染予防、水分の取り方を医療者と一緒に決めます。
感覚が低下すると「痛み」という危険信号が出にくく、同じ姿勢が続くことで皮膚が傷つきやすくなります。予防(体位変換・クッション・皮膚チェック)が最重要です。
可能です。上肢や体幹の筋力・心肺持久力を安全に高める練習を行い、疲労や痛みに配慮しながら活動量を増やします。
ご家族の方へ
患者さんが安心して在宅生活に戻るためには、ご家族のサポートが大きな力になります。退院に向けて、以下のような準備を私たちと一緒に行っていきましょう。
- 介助方法の共有: 患者さんの「できること/手伝いが必要なこと」を理解し、安全な介助方法を練習します。
- 皮膚のチェック: 「床ずれ(褥瘡)」を予防するため、ご家族にも皮膚の状態をチェックする習慣を身につけていただきます。
- 排尿管理の理解: 必要な場合は、ご家族にも清潔で安全な排尿管理の手順を学んでいただきます。
- 住宅環境の確認: 作業療法士と一緒にご自宅に伺い、手すりの設置や段差の解消など、専門家の視点からアドバイスします。
退院後の生活で大切なこと
退院後の生活では、合併症の予防と、獲得した能力の維持が重要になります。
当院では、ご自宅に戻られた後も、訪問リハビリや通所リハビリといったサービスで、あなたの「自分らしい暮らし」を継続的にサポートします。
退院後の注意点
- 褥瘡予防:長時間同じ姿勢を避ける、クッションを調整する、皮膚の赤みが続く場合は早めに医療機関に連絡する。
- 排尿トラブル:発熱、尿のにごり、強い臭い、下腹部痛は尿路感染のサインのことがあります。
- 自律神経症状(ふらつき・冷汗・血圧変動など)があれば、無理せず休み、医療者へ相談する。
- 運動は“継続できる量”で:退院直後に頑張りすぎると痛みや疲労で続きません。メニューを変更する場合は専門家に相談しながら更新します。